顧客データ、取引データなど、現代の企業においてはデータがなければビジネスが成り立ちません。
日常的に使用するデータを一時的にパソコンに保存しているというケースもありますが、長期間保存しておかなければならないデータや、決して失ってはならないデータというものもあるでしょう。
このようなデータの管理は、パソコンにそのまま保存しておくのではなく、適切なデバイス・管理方法を策定して保存しておく必要があります。
この記事では、中小企業のデータ管理やバックアップの方法、データ管理にNASを利用するメリットなどについて解説します。
中小企業のデータ管理が必要な理由
中小企業が日々のビジネスを進めるうえでは、適切なデータ管理が必要不可欠です。
中小企業におけるデータ管理の必要性は、大きく分けて以下のようなリスクへの対処を目的としています。
・人的データ消失のリスクを防ぐため
・災害に備えるため
・サイバー攻撃・ウイルス被害を防ぐため
・機械故障に備えるため
それぞれ具体的に見ていきましょう。
人的データ消失のリスクを防ぐため
高度にIT化された現代のビジネスでは、データは企業にとって資産のひとつと考えることもできます。
そして同時に、ひとたび流出すれば多大な損害や、信用の毀損が生じます。
データ消失や漏洩は、外部からの攻撃を原因とするものももちろんありますが、社内の人的ミス・不正によってデータ消失が起こるケースも珍しくありません。
代表的な人的ミス・不正によるデータ流出には、以下のような事例があります。
・誤操作によるデータの削除
・誤送信によるデータの流出
・閲覧権限などの管理ミスによるデータの削除・流出
・意図的な企業秘密の漏洩
社内の人員は、日常的な業務遂行のためにデータを利用する必要があるため、データ利用の利便性を損なうのは好ましくありません。
一方、誤操作や意図的な漏洩によってデータの消失・流出が起こるケースにも同時に備える必要があります。
災害に備えるため
外的な要因でデータが消失してしまう代表的な要因のひとつに「災害」が挙げられます。
特に日本は世界的に見ても地震が多い地域であり、地震によって発生する津波、他にも台風や集中豪雨などの災害も発生しています。
重要なデータを保存している企業のサーバー・ストレージが損傷してデータが消失する危険性があります。
2011年3月11日に発生した東日本大震災と、複合災害として発生した津波において、行政データ、住民データを保管していたサーバーが津波に襲われ、一時的にデータが使用できなくなるという事例が市町村役場で発生しました。
企業における顧客データや取引に関わるデータも同様に、災害により使用できなくなる、データが消失してしまうという危険性を常に意識する必要があります。
サイバー攻撃・ウイルス被害を防ぐため
企業の多くがコンピューター、ネットワークを使用する現代のビジネス環境においては、サイバー攻撃・ウイルス被害も大きなリスクとなります。
警察庁が発表した「令和6年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等」では、サイバー攻撃の事前準備としての「ぜい弱性探索行為等」だけで9824.7件(1日・1IPアドレスあたり)とされています。
サイバー空間をめぐる脅威の情勢等(警察庁)この数字は、平成23年以降増加の一途を辿っているとも指摘されています。
私人のプライベートなコンピューターを対象としたサイバー攻撃だけではなく、もちろん政府機関・公共機関・そして企業へのサイバー攻撃も減少する傾向は見られません。
企業のデータは、攻撃者にとっては是が非でも入手したい情報であることは間違いありません。
また、攻撃の目的によってはデータを消失させる、サーバーをダウンさせるだけでも攻撃者の利益となる場合があります。
企業はこれらの脅威にも適切なデータ管理によって備える必要があります。
機械故障に備えるため
災害のケースでは、地震や津波による機器の故障が発生しましたが、災害以外の場面でも機械が故障してデータにアクセスできなくなるケースは珍しくありません。
企業のビジネスにとって重要なデータを保管していたパソコン、サーバー、あるいは外部ストレージデバイスなどが突然故障すると、大きな損害をもたらす危険性があります。
多くの企業では、バックアップの作成を定期的に行うことでこうしたリスクに備えています。
しかし、バックアップはリアルタイムに作成されるケースは少なく、数日前のデータまでしか復元できないというケースもあります。
バックアップの範囲、頻度、そしてバックアップデバイスの安全性などについてもデータ管理の一部として検討する必要があるでしょう。
中小企業のデータ管理・バックアップにおすすめなのはNAS
データ管理やバックアップには様々な選択肢があります。
パソコンのHDD・SSDにそのままデータを保存する以外に、サーバーや外付けストレージ、クラウドストレージサービスなどが代表的でしょう。
どの手段も一長一短ですが、安全性、利便性、コストパフォーマンスのバランスに優れているのはNASという選択肢です。
中小企業にとってのNASの活用について、以下の項目に分けて解説します。
・NASとは
・NASのメリット
・NASのデメリット
それぞれ具体的に見ていきましょう。
NASとは
NAS(Network Attached Storage)は、ネットワークに接続できるストレージデバイスです。
構造的にはシンプルに、HDDやSSDなどのストレージディスクを内蔵し、ネットワークに接続するLANポートを備えています。
複数のHDDやSSDを搭載できるモデルも多く、その場合にはNASだけでRAIDを構成できるモデルが一般的です。
また、多くのNASには管理用の独自OSが導入でき、グラフィカルにユーザー管理、バックアップ、スナップショット設定などが行えます。
NASのメリット
NASはネットワークに接続できるという点がまず大きなメリットといえます。
外付けHDD・SSDなどは一般的にデータ通信用のケーブルを使ってデータを伝送するため、パソコンやサーバーの近くにデバイスを持っていって接続する手間があります。
また、1台のデバイスとしか同時に接続できないため、複数人が同時に共同利用するという運用もできません。
NASはネットワークに接続できることから、社内の同一ネットワークから同時に複数のユーザーがアクセスできます。
また、適切にネットワーク設定を行えば外部ネットワークからもアクセスできるため、現場から事務所のNASにアクセスする、遠隔地の支社のNASにアクセスするという運用も可能です。
NASのデメリット
NASのデメリットは、機器を導入する際のイニシャルコストが発生する点が挙げられるでしょう。
クラウドストレージサービスは月額利用料を支払うという形態のため、利用開始当初に高額な費用が発生するケースは稀です。
一方NASの場合には、NAS本体、HDD・SSDなどの内蔵ディスクを購入して利用する必要があります。
また、NASは利用に際して適切な管理が必要となる点も見方によってデメリットです。
ユーザー管理、権限管理、RAIDの構築、バックアップのスケジューリングなどといった運用上の設定は、自社の状況に合うよう適切に設定しなければ使えません。
自社にこれらの設定を行う人員を確保し、人事異動や組織変更に応じた権限管理など、必要に応じた設定変更を適宜行う必要があります。
データ管理・バックアップにNASを活用するポイント
中小企業のデータ管理やバックアップには、NASが効果的です。
さらに、いくつかのポイントを運用時に意識して実施すると、さらにNASが効果的に活用できるでしょう。
中小企業におけるNAS活用の際のポイントについて、以下の点に分けて解説します。
・バックアップの保管場所を分ける
・バックアップ先を複数設ける
・バックアップのルールをマニュアル化・共有する
それぞれ具体的に見ていきましょう。
バックアップの保管場所を分ける
NASに保管しているデータは、NAS内でRAIDによるミラーリングを行う、バックアップを作成するなどの方法により消失のリスクに備えることができます。
しかし、ミラーリングやNAS内のバックアップだけでは、NAS本体や搭載しているディスクの複数台の故障によってデータが消失するリスクがあります。
このようなリスクに対応するには、バックアップの保管場所を分けるという方法があります。
NASのモデルの多くは、NAS内のデータを別の場所にバックアップする機能を標準的に搭載しています。
たとえば、本社のデータをネットワーク経由で支社にバックアップする、あるいはその逆のような運用も可能です。
このような方法でバックアップを作成すると、機器そのものの故障だけではなく、あるエリアで災害が発生した際にもデータが別の場所に存在するという状況を作り出せます。
一度の災害発生などにより壊滅的な被害を受けるような状況からの復旧という「ディザスタリカバリ(DR)」では、このような考え方をもとに、遠隔地へのバックアップが選択肢となるケースが多いのです。
バックアップ先を複数設ける
さらにデータの安全性を検討する場合には、バックアップ先を複数設けるという手段もあります。
この方法は、バックアップを保存しているデバイスにも必ず故障のリスクがあることに対する備えとなります。
ストレージにはHDD・SSDなどの製品が選定されるのが一般的です。
それぞれにメリットもありますが、あらゆるストレージ製品には弱点があります。
ストレージの突然の故障によるデータ喪失は、ひとつのストレージにバックアップを作成するという運用を行う限り避けられないものです。
一方、バックアップ先を複数設けることで、あるストレージではバックアップデータに損失が出ていたとしても、もう一つのバックアップは無事である可能性が高いといえます。
同時に複数のバックアップが失敗する、データが喪失する可能性が低いことにより、複数のバックアップ先を設けることはデータの安全性を高めることとなるのです。
バックアップのルールをマニュアル化・共有する
NASによるデータのバックアップは、多くの外付けストレージやクラウドストレージサービスのように「ドラッグ&ドロップ」だけで行うものではありません。
スケジューリングされた自動バックアップ、保存先の指定などの設定には、メーカー・モデルごとに異なる手順が必要です。
バックアップのやり方を熟知している担当者がいる場合にはある程度安心です。
しかしその担当者が不在になる、退職するなどの場合に、継続的なバックアップの運用ができなくなってしまうことは避けなければなりません。
このように属人化を防ぐためにも、バックアップのルールを「誰でも理解できるマニュアル」を作成して共有し、社内の誰でもバックアップ・復元操作を行えるようにしておくのが望ましいでしょう。
まとめ
この記事では、中小企業のデータ管理・バックアップについてと、それらの運用のためのNAS活用について解説しました。
中小企業のビジネスにおいて、適切なデータ管理や日常的なバックアップは欠かせません。
バックアップには様々なデバイスの選択肢がありますが、中小企業が導入しやすい選択肢のひとつにNASがあります。
データ管理やバックアップ手段としてNASの導入を検討している企業の担当者の方は、この記事を参考にして、安全性の高いデータ管理やバックアップの方針を策定してみてください。
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