複数の拠点でNASを運用している企業にとって、拠点間でのバックアップ体制をどのように構築するかは重要な検討ポイントです。
QNAP NASの「Hybrid Backup Sync(HBS3)」を使えば、拠点をまたいだバックアップを柔軟に構築できますが、効果的に多拠点バックアップを運用するには、バックアップ操作よりも「バックアップ体制をどのように設計するか」という戦略が欠かせません。
この記事では、多拠点バックアップの設計をする際に押さえておきたいポイントについて解説します。
多拠点バックアップとHybrid Backup Syncの役割
多拠点バックアップとHybrid Backup Syncの役割について、以下のポイントに分けて解説します。
・単一拠点運用のリスクと多拠点バックアップの必要性
・HBS3が多拠点バックアップに適している理由
それぞれ具体的に見ていきましょう。
単一拠点運用のリスクと多拠点バックアップの必要性
NASをひとつの拠点のみで運用している場合、重大なリスクは災害です。
拠点が地震や火災、水害などの災害に見舞われると、元となる業務データとあわせてバックアップデータごと失われてしまう危険性があります。
同一拠点内でのRAID構成やスナップショットは、NAS内のHDDの故障や、誤操作によるデータ削除への備えとしては有効です。
しかし、拠点そのものが被災した場合の対策にはなりにくいといえます。
そのため、拠点が災害に見舞われた際の備えとして、距離が離れた別の拠点にデータを分散して保持しておく多拠点バックアップは、事業継続(BCP)の観点から重要性を増しているのです。
HBS3が多拠点バックアップに適している理由
QNAP NASのバックアップアプリケーションである「Hybrid Backup Sync(HBS3)」は、拠点間のNAS同士を直接連携させ、バックアップジョブとして管理できるアプリケーションです。
ローカル間でのバックアップ、リモート拠点のNASへのバックアップ、クラウドストレージへのバックアップをひとつのアプリケーション上で一元的に管理できます。
また、定期的なスケジュール設定なども可能なため、拠点数や保存先が増えても運用の窓口を統一できるうえに工数も最小限で実現できる点が大きなメリットです。
多拠点バックアップの構成を設計する手順
多拠点バックアップの構成を設計する手順について、以下のポイントに分けて解説します。
・バックアップトポロジーを決める(一極集中型/相互バックアップ型)
・RPO・RTOを踏まえたジョブ設計
・拠点間の回線帯域を考慮したスケジュール設計
それぞれ具体的に見ていきましょう。
バックアップトポロジーを決める(一極集中型/相互バックアップ型)
多拠点バックアップの設計では、まずトポロジー(拠点間の関係性の構図)の選定が重要となります。
代表的な構成としては、本社を中心として各支店のデータを本社NASに集約する「一極集中型」と、拠点同士が互いのデータをバックアップし合う「相互バックアップ型」の2つがあります。
一極集中型は、本社での一元管理がしやすく、バックアップ監視の窓口をひとつに絞れる点がメリットですが、本社側のストレージ容量や回線への負荷が集中しやすいというデメリットがあります。
一方、相互バックアップ型は、拠点同士が対等にバックアップし合うため特定拠点への負荷集中を避けられますが、拠点数が増えるほど管理対象が増え、統制がとりにくくなる面があります。
バックアップ戦略の方向性、自社の拠点数、本社・支店の役割分担なども含めて、どちらの構成が適しているかを検討するのがよいでしょう。
RPO・RTOを踏まえたジョブ設計
バックアップの実行頻度を決定するには、RPO(目標復旧時点:どこまでのデータ消失を許容できるか)とRTO(目標復旧時間:どれだけ早く復旧させたいか)の2つの指標から逆算して決定することが効果的です。
たとえば、RPOを「12時間」と設定するのであれば、バックアップジョブも12時間ごとに実行する必要があります。
一方で、実行頻度を上げるほど回線やストレージへの負荷は増すため、業務データの重要度・更新頻度に応じ、拠点ごと・データの種類ごとに適切なRPO・RTOを設定したうえでジョブ頻度を設計することが必要となります。
拠点間の回線帯域を考慮したスケジュール設計
拠点間のバックアップは、社内ネットワークではなく外部のインターネット回線やVPN経由での通信となります。
このような場合は、回線帯域が実運用上のボトルネックになるでしょう。
HBS3には、バックアップ転送時の帯域を制限する機能があり、業務時間中の回線を圧迫を防ぎ、通常業務に影響を起こしにくくする設定が可能です。
また、複数拠点・複数ジョブを同時に実行すると回線が混雑するおそれがあるため、拠点ごとにバックアップの実行時間帯をずらすなど、スケジュールを分散させるという点も、見落としがちですが重要なポイントです。
多拠点バックアップ運用時に押さえておきたいポイント
多拠点バックアップ運用時に押さえておきたいポイントについて、以下のポイントに分けて解説します。
・ジョブの実行状況を一元的に監視する
・障害時の切り替え(フェイルオーバー)を想定しておく
・定期的なリストアテストを行う
それぞれ具体的に見ていきましょう。
ジョブの実行状況を一元的に監視する
拠点数が増えるほど、バックアップジョブの数も比例して増加します。
個々のジョブが正常に完了しているかを見落とさないよう、HBS3のダッシュボードからジョブの実行状況・結果をまとめて確認できる体制を整えておくことが重要です。
エラーが発生した際に通知を受け取れるよう、あわせてアラート設定をしておくこと、アラートの確認をルーティン化することなどの対策も効果的といえます。
障害時の切り替え(フェイルオーバー)を想定しておく
多拠点バックアップは、単にデータのコピーを保持するだけでなく、ある拠点のNASが利用できなくなった際に、バックアップ先の拠点やクラウドから業務を継続できる状態にしておくことが理想的といえるでしょう。
バックアップ先のデータをどのような手順で業務利用できる状態に切り替えるか、切り替え(フェイルオーバー)の手順や役割分担をあらかじめドキュメントにしたりして整理しておくと、実際に障害が発生した際にも、混乱を最小限に抑えて対応できる可能性が高まります。
定期的なリストアテストを行う
バックアップは、正常に取得できていれば安心と考えがちですが、実際に復元(リストア)できるところまでを含めて検証しておく必要があります。
バックアップジョブが正常に完了しているように見えても、いざ復元しようとしたらデータが破損していた、という危険性は充分にあります。
定期的に、バックアップデータからリストア作業のテストを行い、想定どおりに復元できるかを確認しておくことが、多拠点バックアップ体制の実効性を担保するうえで重要です。
まとめ
この記事では、QNAP NASの「Hybrid Backup Sync(HBS3)」を活用した多拠点バックアップについて、画面操作ではなく設計・運用の視点から解説しました。
トポロジーの選定、RPO・RTOを踏まえたジョブ設計、回線帯域への配慮、そして監視・フェイルオーバー・リストアテストといった運用体制まで含めて検討することで、多拠点バックアップが万一の障害の際に効果的に作用する、実効性のあるものになります。
この記事を参考にしつつ、自社の拠点構成やバックアップ戦略の見直しや策定を検討してみてください。
QNAPは台湾のネットワーク機器専業メーカーで、世界28カ国で展開するグローバル企業です。IT機器の専門商社で、QNAPの正規代理店でもあるテックウインドは、豊富なノウハウを基に的確なモデル・構成のご提案をいたします。
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