企業・法人では、同じExcelファイルに都度情報を書き込み保存する、別のタイミングでまた同じファイルに書き込みをして随時更新するという運用が珍しくありません。
しかし、ファイルの多くはプロパティから最新の更新日時やファイルの作成日は特定できても、途中どの部分がいつ、誰によって変更されたのかという情報が重要となるケースもあります。
このような情報を管理できるのがファイルの「バージョン管理」です。
この記事では、ファイルのバージョン管理についての概要や、法人におけるファイルバージョン管理の重要性について解説します。
バージョン管理とは?
ファイルの「バージョン管理」とは「あるファイルに変更が加えられるたびに履歴を保存する」ことを指します。
特に法人におけるデータ利用では顕著ですが、特定のファイルに繰り返し変更・更新が加えられることがあります。
これらの変更・更新を都度保存し、あとから特定時点でのファイルの状態を呼び出せるようにしておくことをバージョン管理と呼びます。
バージョン管理には大きく分けて2つの方式があります。
・集中管理方式
・分散管理方式
それぞれ具体的に見ていきましょう。
集中管理方式
集中管理方式とは、バージョン管理をする特定のファイルを、専用のサーバーによって一元管理する方法を指します。
この専用サーバーのことを「リポジトリ」と呼びます。
集中管理方式は、各ユーザーがファイルに変更・更新(チェックイン/コミット)を行うたびにリポジトリのバージョンが加算されていき、自動的にバージョンが増えていくという方式です。
この方式は、リポジトリにあるファイルに対して変更履歴を直接的に記録します。
そのため、集中管理方式のリポジトリ上のファイルを作業する際には、ユーザーは必ずリポジトリに接続している必要があります。
分散管理方式
分散管理方式は、ユーザーが各自のローカル環境(パソコン内など)にリポジトリのコピーを保有する方法です。
これをローカルリポジトリと呼びます。
各ユーザーはローカルリポジトリに対して変更・更新を加え、ローカルリポジトリは特定の周期でサーバー(リモートリポジトリ)に変更記録を同期(Push/Pull)します。
この方法は、集中管理方式とは異なりサーバーに直接変更記録を反映するわけではありません。
そのため、ユーザーはサーバーに接続できない環境であっても作業を継続することができ、ローカルリポジトリがリモートリポジトリと接続できるようになった際に変更記録が反映されます。
バージョン管理を導入するメリット
ファイルのバージョン管理は、ファイルを直接複製するバックアップなどとは異なります。
一方で、特に同じファイルに何度も変更や更新を行う環境においては、バージョン管理を導入するメリットが多くあります。
複数のユーザーが編集するファイルにバージョン管理が導入されている場合、作業の問題点を発見しやすく、また問題のある更新が行われた場合に過去の状態に復元できる効果もあります。
特に法人において、これらのメリットが重要となるのです。
法人でファイルバージョン管理が重要な理由
では、法人のファイル管理においてバージョン管理がなぜ重要なのかについて、以下のポイントに分けて解説します。
・複数担当者による共同作業の効率化
・競合の回避と責任の明確化
・監査対応・コンプライアンス要件への対応
それぞれ具体的に見ていきましょう。
複数担当者による共同作業の効率化
法人では、ひとつのプロジェクトに対して複数の担当者が作業にあたるケースは珍しくありません。
チームや部署で同じプロジェクトを担当している場合、チーム内・部署内のあらゆるメンバーが同じファイルを使うこともあるでしょう。
このような場合に、各自がそれぞれのパソコンでファイルを作成し、あとから共有用のファイルに手動で反映するという方法は不可能ではありませんが、非常に非効率的です。
バージョン管理を導入し、共有のファイルをひとつ作成して、各担当者がそれぞれのタイミングで更新するほうが、管理の手間は大きく削減できるのです。
競合の回避と責任の明確化
同じファイルを複数の担当者が更新するケースでは、競合が発生するケースがあります。
つまり、同じタイミングで別の変更を適用してしまい、ファイルに問題が発生する、ファイルが破損するなどのケースです。
Excelファイルなどでは想像しやすいですが、同じセルに複数の担当者が書き込んでしまった場合は競合している状況となります。
このような事態が発生した際に、それぞれの更新タイミングと更新内容がバージョン管理から判明すれば、あとから正しい内容に修正することもできます。
また、更新されたタイミングや更新担当者がわかれば、該当の処理を行った責任者を明確化できます。
監査対応・コンプライアンス要件への対応
企業の経営では「最終的に数字が合っていればよい」という曖昧な基準ではなく、いつ更新されたものか、そこで更新されたものがどのような内容かという点まで重要視されます。
これらのポイントが問題となるのは、多くの場合企業経営の健全性・適法性が争われる監査対応やコンプライアンス要件の対応についてです。
バージョン管理を導入することで、更新した日付・時間・担当者が明確に記録されます。これにより、あとからファイルの内容を改ざんすれば、すぐに改ざんの履歴を確認できます。
また、不自然な更新履歴があればそれを速やかに特定し、他の資料や書類などと照らし合わせて整合性を確認するなどの利用もできるでしょう。
バージョン管理のやり方
ファイルのバージョン管理を実現するには、ファイルの特定時点での内容が保存されており、更新日時と更新者が記録されている必要があります。
この原則だけを維持するのであれば、ファイルを更新するたびに新規にファイルを保存し、更新日時と更新者をファイル名に記入する方法でも、簡易的なバージョン管理が実現できているといえます。
ただし、より簡便で実用的なバージョン管理を行うには、一般的にバージョン管理システム・ソフトウェアを使用します。
バージョン管理システムの選び方とNASのバージョン管理
バージョン管理システムは、集中管理型と分散管理型の両方があります。
いずれのタイプにもメリット・デメリットがありますが、自社の運用に合わせてバージョン管理システムを選定するとよいでしょう。
代表的なバージョン管理システムには、オープンソースの分散管理型バージョン管理システム「Git」があります。
また、オープンソースではありませんが同様の分散管理型バージョン管理システムの「Mercurial」もよく知られています。
集中管理型のバージョン管理システムには「Subversion」などがあります。
なお、NASでは複数のユーザーが同時にNAS内のファイルにアクセスして利用することを想定しているため、バージョン管理機能の導入が簡略化されているケースが多いといえます。
たとえば、QNAP NASではHBS(Hybrid Backup Sync)により「スマートバージョン管理」機能が利用できます。
参考:
Hybrid Backup Sync (HBS 3)によるバックアップの設定方法についてバックアップファイルをバージョン管理の基準に合わせて、バージョンごとに保持する機能です。
また、厳密にはバージョン管理と異なる部分もありますが、NASではスナップショット機能・ログ機能からファイルのバージョンや更新履歴をたどることもできます。
参考:【ID63】設定・確認方法【システムログの確認方法、ディスクの健康状態をチェックする方法】
バージョン管理の注意点
バージョン管理を導入する場合には注意点があります。
まず、通常のパソコンなどでのファイル更新と異なるバージョン管理システムの操作や概念をチームメンバーが共有する必要がある点です。
リポジトリへのチェックイン/コミットがどのような効果を持つのか、Push/Pullの操作方法などを、ファイルを扱うメンバー全員が覚えられるよう教育する必要があります。
また、バージョン管理システムそのものの料金・教育時間など、バージョン管理にかかわるコストも無視できません。
現在進めている業務のスケジュール感や人員、体制などを考慮し、適切なタイミングでバージョン管理を導入することが重要です。
まとめ
この記事では、ファイルのバージョン管理について解説しました。
ファイルのバージョン管理は「最新の状態しか確認できない」「該当部分がいつ更新されたかわからない」などの問題点を防ぎ、企業の業務進行を助けてくれます。
バージョン管理はパソコンのファイル更新・変更とは若干異なる概念を含むため、教育期間が必要などの課題はありますが、企業にとって重要なデータを扱うことは、そのコストをかける価値は十分にあるといえるでしょう。
この記事で解説した内容を参考に、ファイルのバージョン管理の導入を検討してみてください。
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