NASはネットワークに接続して利用する前提のデバイスです。
しかし、ネットワークは障害を起こすことがあります。
NASをはじめとしたネットワーク機器は、常に稼働していることがシステム全体にとって重要である場合が多く、ネットワークの障害によって大きなトラブルが生じることも珍しくありません。
この記事では、ネットワークに接続して利用するNASの耐障害性を高め、かつ負荷分散・最適化による通信の高速化が期待できる「NIC冗長化」の技術について解説します。
NIC冗長化とは
NIC冗長化(チーミング)とは、複数のNICを1つの仮想的なNICとして束ねる技術です。
NIC(Network Interface Card)は、パソコンやNASなどの危機をネットワークに接続するためのカード型の機器を指します。
NICという呼び方以外にも、LANカード、LANポート、ネットワークアダプターなどと呼ばれる場合もあります。
パソコンやNASの多くは、LANケーブルを差し込むポート(ネットワークポート)を備えています。
このポートは、パソコンやNASのマザーボードに内蔵型のNICが搭載されており、NICのポート部分がパソコンやNASの側面・背面に露出している状態と表現できるでしょう。
NASやサーバーではよく見られますが、1つのデバイスに複数のNICが搭載されている場合があります。
通常は、それぞれのNICごとにインターフェースが独立しており、それぞれ異なるIPアドレスが付与されます。
NIC冗長化はこれらの複数の物理NICを、仮想的に1つのNICとして認識させて動作させることを指すのです。
NIC冗長化の目的
複数のNICを束ねるNIC冗長化の目的は、大きく分けて以下の2つです。
・フェイルオーバー(耐障害性)
・通信の最適化(ロードバランシング/LACP)
それぞれの目的について、詳しく見ていきましょう。
フェイルオーバー(耐障害性)
フェイルオーバーとは、一般的に稼働しているシステムやサーバーに障害が発生した際に、瞬時に待機システムに切り替えて動作を継続させる仕組みを指します。
法人で使用するNASやファイルサーバーなど、基本的に常時稼働していることが前提の機器においては、障害発生時に動作が停止しないよう、フェイルオーバー構成が構築されることがあります。
NIC冗長化によって、2つの物理NICが1つの仮想NICとして動作するため、片方のNIC・ケーブルに障害が発生した場合でも、通信そのものが切断されることはなく、動作を継続できるという仕組みです。
通信の最適化(ロードバランシング/LACP)
耐障害性を高める目的でもNIC冗長化は行われますが、通信の最適化のために行われる事例も多くあります。
NIC冗長化が通信の最適化に寄与する仕組みは、以下の2通りです。
・ロードバランシング(負荷分散)
・LACP(リンクアグリゲーション)
まずロードバランシングとは、負荷分散を意味します。
ネットワーク内を行き来するトラフィックが1つの系統に集中した場合、帯域を消費することによって通信の遅延などが発生する場合があります。
ロードバランシングでは、物理NICを束ねることで、複数の物理NICでトラフィックの負荷分散を行います。
つまり、本来1つのNICで処理するトラフィックを2つのNICで手分けして処理することになるため、処理能力が向上するのです。
次に、LACP(リンクアグリゲーション)と呼ばれる技術です。
LACPそのものは、正確には複数のNIC・ケーブルで通信ができるようにするための規格です。
本来は、1つのNASから複数のLANケーブルをハブに接続したとしても、片方のNIC・ケーブルだけが使用されます。
これを、両方同時に使用できるようにするのがLACPという規格(プロトコル)です。
LACPを使用すると、2本のNIC・ケーブルが同時に通信できるようになるため、単純に各ケーブルの合計値が理論上の通信速度となり、高速化が期待できます。
もちろん、LACPを使用して物理NICを束ねた場合でも、耐障害性の確保は同時に可能です。
QNAP NASでのNIC冗長化の実現方法
QNAP NASでは、NIC冗長化(チーミング)のことをポートトランキングと呼んでいます。ポートトランキングの設定は、QTSの「コントロールパネル」「ネットワークとファイルサービス」「ネットワークと仮想スイッチ」から行います。
「ネットワークと仮想スイッチ」を開くと、現在有効なアダプターなどの情報が表示されます。
この画面で使用している「TS-464」モデルでは、NICは2つあり、現在1つがLANケーブルを接続して有効な状態です。
実際に使用する際には2本のLANケーブルを接続したうえで設定を行いますが、今回はテストのためひとまず設定画面だけを追っていきます。
NIC冗長化を行うには、左側のメニューから「インターフェイス」を選択し、「+ポートトランキング」のボタンをクリックします。
表示されるウィンドウで「追加」のボタンをクリックします。
現在有効なアダプターの一覧が表示されます。
両方のチェックボックスをオンにして、「次へ」をクリックします。
次に、スイッチのタイプを選択します。
・スイッチなしで2つのNASを直接接続(VJBOD)
・一般スイッチ
・管理対象スイッチ
上記3種類の選択肢が表示されます。自社の状況に応じてスイッチの選択肢を選びますが、今回は「一般スイッチ」を選択します。
次に、トランキングモードを選択します。
・フェイルオーバー
∟Active-Backup
・負荷分散とフェイルオーバー
∟Balance-tlb
∟Balance-alb
上記の選択肢が表示されます。
Balance-tlbとBalance-albの違いは、一見するとイメージしにくいかもしれません。
Balance-albは説明にもある通り、Blance-tlbの機能に加えて、入ってくるIPv4トラフィックの再分散も試行するモードです。
どのモードを選択するかは自社の状況に応じて選択して構いませんが、今回はBalance-albを選択し「適用」をクリックします。
「インターフェース」の欄に「Adapter 1+2」が追加されました。
これでポートトランキング(NIC冗長化)の設定は完了です。
まとめ
この記事では、NASのNIC冗長化の概要と機能について解説しました。
NIC冗長化は、NASなどの常時稼働を前提とするデバイスの継続性・安定性を支える重要な技術です。
自社で活用しているQNAP NASなどでもNIC冗長化を検討している場合は、この記事を参考にして設定を進めてみてください。
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