ファイルやデータを突然失うことは、企業にとって大きな損失となります。
こうした事態を避けるため、多くの企業ではファイルのバックアップを取得していることでしょう。
しかし、ファイルやデータ、システムの状態をそのまま迅速に保存しておける「スナップショット」については、バックアップほどには認知されていないという実態があります。
この記事では、スナップショットとバックアップとの違い、スナップショットがどのような場面で有用であるのかについて解説します。
スナップショット機能とは?
NASやファイルサーバーなどを運用する際には、保存してあるデータが失われてしまうことを避けなければなりません。
このような場面で「ある時点でのデータ領域の状態を保存する」という方法で保存しておくのが「スナップショット」という機能です。
一般的には、データを失うという状況を避けるためには「バックアップ」という機能を活用します。
スナップショットは、バックアップという広い概念の中のひとつですが、バックアップとは違いがあります。
スナップショットとバックアップの違いとは?
バックアップは、NASやファイルサーバーなどのデータを失わないために広く採用される方法のひとつです。
しかしバックアップという言葉で最もイメージしやすいのは、データをそのまま別の場所にコピーするという方法でしょう。
この方法では、NASやファイルサーバーに保存してあるデータ量とまったく同じ容量を別途確保する必要があります。
これに対してスナップショットは、バックアップより圧倒的に少ない容量でデータやファイルの状態を保存しておけるという特徴があります。
その理由としてスナップショットは、ある時点からのファイル・データの変更を「差分として」保管しているためです。
つまり、すべてのファイルをそのままコピーするのではなく、あるファイルが移動された、削除された、作成されたという「状態の変化」を記録しているのです。
それぞれのデータ保護の目的
バックアップとスナップショットには、データの保存方法の違いがあり、それぞれのデータ保護の目的が異なります。
一般的な意味でのバックアップは、ファイルがそのまま複製されていることが重要なのであり、たとえば更新する予定がなくても保存しておかなければならないデータなどを丸ごと複製しておくという目的で役立ちます。
スナップショットは、日々ファイルが移動されたり更新されたりする中で、ストレージに対してどの時点でどのような変更が加えられたのかが状態の変化として記録されます。
つまり「特定時点のストレージ状態」を保存しておく目的のために活用される機能です。
スナップショットのメリットとデメリット
スナップショットをバックアップと比較した場合には、ストレージ容量の節約のほかに、リアルタイムかつ高速にデータの状況を保存できる、定期的にデータ保護のための状態記録ができる、必要があれば特定の時点まで戻すことができるなどのメリットがあります。
一方、デメリットとしては、スナップショットを作成する際のシステムパフォーマンスへの負荷があること、スナップショットデータの整合性・連続性が確保されていなければ、スナップショットとして活用できないという点が挙げられます。
このようなデメリットは、データの状態ではなくデータそのものを複製するバックアップにはない、スナップショット特有のデメリットであるといえるでしょう。
バックアップのメリットとデメリット
一方、スナップショットと比較すると、バックアップにもメリットとデメリットがあります。
バックアップは単純にデータを複製するという機能であり、前後のデータの状態を問いません。
つまり、スナップショットにおいて発生するデータの整合性や連続性に関する問題は無視することができます。
また、スナップショットは復元の際に変更状態を計算して以前の状態に戻すという処理を行うために復元速度が遅くなる傾向にあります。
バックアップの場合には、完全なデータのコピーがある状態のため、復元の際の手順がシンプルで速度も速いというメリットがあります。
その反面、ストレージの使用量が多くなることや、大規模なデータを保存している状態ではバックアップ用のストレージ領域を確保する必要があること、バックアップに時間を要することなどがデメリットであるといえます。
また、バックアップを自動で取得するようスケジューリングしていない場合には、バックアップが現時点から見て古いデータとなってしまう危険性も考慮しておく必要があるでしょう。
データの保存場所にみるスナップショットの種類
スナップショットを作成する目的は、現在稼働しているストレージの状態やデータを保存しておくことです。
このような目的を達成するためには、データの保存場所についても検討する必要があります。以下には、データの保存場所ごとに2つの分類に分け、それぞれの特徴と利用シーンを解説します。
・ローカルスナップショット
・リモートスナップショット
それぞれ具体的に見てみましょう。
ローカルスナップショット
ローカルスナップショットとは、現在データが保存されている同じシステム・ストレージに対してスナップショットを保存するという方法を指します。
ローカルスナップショットを利用する場合には、他のシステム・機器に依存しないことから、現在稼働しているシステムやデータの一時的な保護、変更点の追跡用として活用されるのが主な利用シーンといえます。
リモートスナップショット
リモートスナップショットは、ネットワーク上の別の場所、あるいは外部ストレージにスナップショットを保存するという方法です。
リモートスナップショットは、既存のシステムやストレージが物理的な破損・故障を起こした場合でも、システムやデータを復旧できることを目的として利用されます。
代表的な活用シーンが災害対策です。別の活用方法としては、複数の拠点を持つ企業などで支社・店舗のデータを本社で保存するなどの集中管理のために活用されるケースもあります。
保護するデータの違いにみるスナップショットの種類
スナップショットの分類には保存場所以外に、保護するデータの違いによっても分類があります。
以下には、保護するデータの違いにおけるスナップショットの分類の概要を解説します。
・フルスナップショット
・その他のスナップショット
それぞれ具体的に見ていきましょう。
フルスナップショット
フルスナップショットは、増分スナップショットとは異なり、完全なスナップショットを作成するという方法です。
重要なデータの完全なスナップショットを作成したいという場合にも使用されます。
スナップショットを活用する際には、初回に必ずフルスナップショットを作成することが一般的です。
フルスナップショットはストレージ容量を大きく消費するほか、スナップショットの作成・復元の際に時間がかかりますが、常に完全なスナップショットを作成できるというメリットもあります。
その他のスナップショット
フルスナップショット以外にも、前回のスナップショットからデータの変更点のみを保存する「増分スナップショット」や、特定のアプリケーションのデータや状態を保存する「アプリケーションスナップショット」などもあります。
スナップショットを保存するストレージの容量や、スナップショットの用途に合わせて種類を選択するのが良い方法ですが、フルスナップショットの取得が最も安全性の面では高いと考えてよいでしょう。
スナップショット機能活用がビジネスで重要となる理由
ビジネスの場面において、スナップショットはどのような理由で重要視されるのでしょうか。
データやファイルの保護はバックアップで行っているから問題はない、と考える人も少なくありませんが、バックアップとスナップショットは相反する考え方ではなく、組み合わせて使用することで、より強固なIT基盤となります。
以下に、スナップショット機能の活用がビジネスで重要となる理由について解説します。
・データの保護と「復元性」の確保
・ビジネスの継続性を確保するBCP計画の一環として
・セキュリティ・ランサムウェア対策の強化として
それぞれ具体的に見ていきましょう。
データの保護と「復元性」の確保
データの保護は、現代のビジネスにおいて必須といえる事項です。
しかし、いくらデータを保護していたとしても、保護したデータを必要に応じて活用できなければ、ビジネスが停滞してしまうリスクへの対処にはなり得ません。
たとえば多くのデータを扱う企業がスナップショットを作成せず、定期的に作成されている膨大な量のバックアップのみという場合には、復元までに多大な時間を要し、データ復元までの間に損失を被る可能性もあります。
データの保護に加えて、必要なタイミングで迅速にデータを復元できるという「復元性」が確保できる点が、スナップショットの重要性のひとつであるといえます。
ビジネスの継続性を確保するBCP計画の一環として
災害などの緊急事態が発生した際に、企業が損害を最小限に抑えつつ、事業の復旧・継続を図るという「BCP(事業継続計画)」を策定することは、現代の企業において重要視されています。
特に大規模な自然災害が発生した際には、自社内のファイルサーバーに保存されているデータとともに、同じ建物内に保管していたバックアップ用のストレージも使用不能となるケースがあります。
バックアップ用のストレージを遠隔地に保管するという運用も可能ですが、定期的にバックアップを行い、ストレージを輸送するという手段は非効率的です。
また、復元を行う際にも再び輸送が必要になるという点は、ディザスターリカバリーを遅らせる原因となるでしょう。
スナップショットはフルバックアップと比較して容量が少なく済み、かつ復元速度もバックアップより高速となるケースが多いことから、BCP計画・ディザスターリカバリーへの対策の一環として取り入れる価値が高いといえます。
セキュリティ・ランサムウェア対策の強化として
マルウェアの一種である「ランサムウェア」は、利用者のシステムへのアクセスを阻害し、データを利用不能にするリスクがあります。
こうしたランサムウェアによる被害は、企業としても無視できない規模で発生しており、ランサムウェアへの対策としてバックアップを作成している企業も多いでしょう。
バックアップもランサムウェア対策・セキュリティ対策として当然作成しておくべきものですが、やはりリアルタイムにシステム状態を保存しておくことができ、迅速に復旧が可能なスナップショットは、突如としてシステムが利用不能になるというケースにおいて有用です。
データだけでなく社内システムや開発環境までが使用不能となる点に注目すると、先の項目で解説した「BCP対策」とも重なる部分があります。
ビジネスの継続性を確保するためには、バックアップだけではなくスナップショットも保存しておくことが重要であるといえるでしょう。
まとめ
この記事では、バックアップと混同されることが多い「スナップショット」の機能について解説しました。
スナップショットはローカルへも保存することができますが、ネットワーク上のストレージ、つまりファイルサーバーやNAS上にもスナップショットを作成することができます。
自社ファイルサーバーの突然の不具合や故障に備え、遠隔地にあるNASにスナップショットを保存するという手段も有効であるといえるでしょう。
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